さぁ祈ろうぜ世界の為に 救いようない僕らのために


・「ワンルーム叙事詩」/amazarashi


ワンルーム叙事詩

ワンルーム叙事詩


amazarashi、3枚目のミニアルバム。(ちなみに全国流通盤としては3枚全て今年リリース)


 もうなんか凄まじいです。感情がむき出し…みたいな言葉より、情念、怨念が詰まってる、という表現がふさわしいような。そんな凄み。
 衝動的で壮大、それでいて耳に馴染むサウンドが、言葉や声の重量感をひきたてつつ、聴きやすくもしています。ともすれば、大袈裟で陳腐な印象を与えかねない、ぎりぎりの言葉を、勢いとメロディーが支えている感じ。彼らの作品に毎回ついてる「歌詞」とは別の「詩」の方の役割も重みを増した印象を受けました。


 全体的に、前作までより人を選ぶ内容になってる感あり。…なんだかうまくまとめられる気がしないので、久々に全曲感想書いて見ようと思います。



・「奇跡」


「今夜生まれてくる命と 死んでしまう命 
そして懸命に輝く命と 無駄に生きながらえる僕
こんな夜は消えてしまいたいとよく思うけれど 
お前なんか消えてしまえ 何で今日まで生きてたんだ」
アルバムの1曲目の冒頭にこんなフレーズもってくるあたり…もうなんというか(苦笑)
多分ここで「こういうの無理」って思う人は聴かない方がいいです。
「凄く共感する」って人はとりあえず聴いたらそこそこはまると思います。
「あーそうだよね。で?」って思う人、一番聴いてほしいです。深みにはまる可能性高いです。


全てが奇跡なんだ、って歌う歌は世の中に星の数ほどあれど、
その「奇跡」という言葉にこれほど寂しさを感じさせる歌はそう無いと思います。
詩の方の一行目にある、「僕の奇跡は言い訳だ」。詰まるところその言葉に集約される曲。


生きてる事が 奇跡だったら つまずいたのも 奇跡 奇跡
歩き出すのも 諦めるのも 好きにさせろよ 奇跡 奇跡
つまずいたのが 奇跡だったら このもやもやも 奇跡 奇跡
立ち向かうのも 引き返すのも 僕等の答え 奇跡 奇跡



・「クリスマス」


バラード系列のメロディが綺麗で優しく、
サビのラストが「今日は美しいクリスマス」で終わるあたり、
ぱっと聴き流したら普通のJ-POP的なクリスマスソングに思えなくもない…。
でも、そんなわけないですね、はい。
「見てみろよ 酷い世界だろ」と言ってしまいながら、
最後までぶれることなく「美しいクリスマス」と言い切る、そんな二面性のある曲です。


ファンタジーから巨大生物大戦まで(?)見所盛りだくさん&CG凄すぎなPVがありますので、
是非観てくださいませ。でも、映像ばっかりに気を取られるのは勿体ない良曲。


小さな雪の粒も積み重なれば 景色を変えるのは不思議ですね
どうしようもない日も積み重なれば 年月となるのは残酷ですね



・「ポルノ映画の看板の下で」


えー、凄く個人的な感想で申し訳ないんですが、自分にピンポイントで打撃を与えてくる曲です。
「前向くのが面倒なら 後ろ向くのも面倒だ 眠りにつくのも面倒だ 一切合財面倒だ」
…そうですよねー(おい 。


まぁそんなしょーもない共感はさておき…
タイトルから察しの付く通り、荒んだ情景が浮かび上がる、
聴いてて体のあちこちに擦り傷ができそうな歌です。
「叶うよ 叶うよ 叶うよ」の連呼があまりにも空虚に響く。


ポルノ映画の看板の下で ずっと誰か待ってる女の子 
ふざけた日常 マフラー代わりにしても かじかんだその未来 ぬくむ事なく
夢なんてもんは偶像だ それを崇める私、背徳者 願えば叶うよ 叶うよ 叶うよ
うるせぇ背後霊 才能不在



・「ポエジー


お得意?のポエトリーリーディング曲。再生時間一分半の、つなぎ的なトラック…
かと思いきや、このミニアルバムにおいてはある種主役級のインパクトを持ってます。
誤解を恐れず言えば、「お前は中学生か」と思うような願望の連呼。
なんですが、徐々に言葉が積み上がっていく感覚と、
終盤にかけての怒涛の勢い、迫力は、圧巻。これはちょっと聴かないとわからないと思います。


初冬の空に出せなかった手紙を燃やしたい
それが夕日に照らされる頃に泣きたい
本家の桜の木をもう一度見たい 死にたい 死にたい
と言って死ねなかった僕らが生きる今日がこんなに白々しいものだと伝えたい
それでも死ななくて良かったと思う日がたまにある事を伝えたい
母親の胸にもう一度抱かれたい
僕は僕を愛したい



・「ワンルーム叙事詩


閉塞感と空しさに溢れた部屋に火を付け、「燃えろ 燃えろ」と激しく歌う、
アルバムの中でもかなりやけっぱちで、自暴自棄な内容にも思える表題曲。
でもその実、一番前向きさを感じさせる曲でもあります。捻くれまくってるけど。
詩の方のラスト、
「なんにしたって どこへ逃げるにしたって 扉は開けなくては」
という一文が印象的。


作者の宮沢賢治大好きっぷりが伝わってくる内容だったりもします。


燃えろ 燃えろ 全部燃えろ
古いものは全部投げ入れろ 高くそびえたつこの炎 この先照らすかがり火としよう
雨にも負けて 風にも負けて 雪にも夏の暑さにも負けて
それでも 人生って奴には 負けるわけにはいかない



・「コンビニ傘」


「ポエジー」と同じくポエトリーリーディング色の強い曲。2分足らず。
すっと風景が浮かんで、すっと意味の無い感傷が湧いて、
よくわからない何かを残して去っていく。そんな曲です。


冷笑の365日にずぶ濡れの コンビニ傘が土にも還らず
ゴミでも非ず モノでも非ず
役立つでも無く 邪魔するでも無く
昼はカラスに啄ばまれ 夜には星座を睨みつけ



・「真っ白な世界」


タイトル通り。真っ白。
青森出身のアーティストということで、amazarashiの曲には「白い雪」
頻繁に登場しますが、この曲は、中でも圧倒的にその「白さ」が強調されています。


全部を覆い隠して、白に 染めてくれる/染めてしまう 雪。
その上に重なる、降り積もる、気持ち。
余計なものをそぎ落とした、シンプルな思いがそこにあります。


昨日も過去も無いよ 積み重なった今を疑ったりしないで
僕はここにいるよ 確かに
積もる 積もる 白い雪 全部真っ白に染めてよ
ばかなこの僕に 降り積もれよ




…以上。
内容無い割に長すぎ(笑)
まぁでもこの長さに「なんじゃ」となって、少しでも興味を持っていただけたら幸いです。




いろいろ衝撃的な「クリスマス」のPVはこちら↑