天辺から爪先までpresents 炎の車上荒らしツアー〜マリンバの鍵盤持ってくことないだろの巻〜 circe/Qurage/dracaena/ゆーきゃん @梅田ムジカジャポニカ


このインパクト大なツアータイトル。
circeとQurageが去年秋のツアー中、名古屋で車上あらしの被害に遭い、
ギター、サンプラーマリンバの鍵盤、etc...の機材を盗難されてしまった、
というエピソードからきています。
本当にひどい話なんですが、それで落ち込むだけで終わらないのが
「殺されても 殺されても 蘇ってくる ゾンビのような音楽を発信」
をコンセプトにしているというレーベル、ZOMBI FOREVERの構成員であるcirceとQurage
その経験を基にした楽曲を収録したCD、
その名もずばり「車上荒らし盤」を完成させ、今回のツアー開催となったわけです。

車上荒らしについての詳細は↓
http://qqqqqurage.exblog.jp/i32/



ムジカジャポニカはその前回のツアーでの被害の直後にライブ予定が入っており、
出演キャンセルも考えたところを、スタッフや企画者さんの奔走により機材が調達でき、
無事(…でもないですが)出演出来たという、circeとQurageの方々にとって思い出深い場所。


自分は名前はよく聞いてた割に来るのは初だったんですが、
入ってすぐに感じるどことなく不思議な空気と、ステージの近さ、
アットホームな雰囲気がとても気に入りました。
基本的に土日だけライブ等のイベントをやっていて、
平日はバー兼食事処として営業しているお店、とのこと。
(カレーがおいしいらしく、ライブ前や合間に食べてる人も…)


珍しく(というか多分初めて)
ずっと座りっぱなしでライブを観るという経験をさせてもらいました。



・dracaena


狭いステージ(楽器で埋まってほとんど通る隙間のない状態)の中に
メンバー五人、かなり頑張って(笑)ポジション確保。


音源と同じく、基本的に浮遊感のある落ち着いた雰囲気の演奏。
それに加えて、生ならではの、空気が揺れているのがはっきり伝わってくるような臨場感。
何より、息の合った音の調和とと、メンバーの楽器を鳴らす仕草に、
やわらかい毛布のような温かさを感じました。
5人居るにもかかわらず、それぞれの音がはっきり鮮やかに聴こえてくるところも良かったです。


MCも凄く温かみがあって和みました。
女性陣2人のテンポの良い会話が特に目立ってて、
この人たち普段から楽しくやってるんだろーなー、と勝手に想像したり。


そのうちまたライブで観る機会がありそうな予感。楽しみにしてようと思います。

http://www.myspace.com/dracaena.tv



Qurage


マイクにくるくる電飾を巻き、それを灯して演奏開始。


「dracaenaさんが温かい空気を作ってくれたところを申し訳ないですが…
 ぶち壊しな感じで歌います」とか何とかそんなことを言いつつ(笑)


ほとんどが新曲。裸足でエフェクターを次々と踏み、
歪ませたり重ねたりしながら奏でられる音。
耳だけでなく視覚的にも飽きさせないパフォーマンス。
彼のライブ、直接観るのは2回目ですが、YouTubeやUst等で、
けっこう慣れていたつもりなんですが、やっぱり実際に観ると全てが新鮮な感じ。
何より、同じ曲でも毎回パターンが違うんですよね。
唯一やった既発表曲である「さがみはら」も、
いつもは間奏部分の特徴的な音の動きにばかり気を取られていたんですが、
この日はそれよりも声の力強さに圧倒的に引き付けられました。
何だか森の精か何かが乗り移ったような…と言うとあれですが(笑)
独特の雰囲気かつ迫力ある歌い方だった気がします。


最後、車上あらしで奪われたギターについて歌った、
「ギター」という曲。本人のMCにもあったように、、
「気持ちをそのまま素直に綴った日記」のような歌詞なんですが、物凄く心揺さぶられました。
多分あの場に居た人は皆それぞれ大事なものに思いを馳せていたんじゃないかと思います。

http://www.myspace.com/qurage


どうでもいい話なんですが、2ℓペットボトルの烏龍茶で
水分補給しておられたのも印象的でした(笑)



・ゆーきゃん


ゆっくりとチューニングをし、
ただシンプルにアコギを鳴らし、歌う。
まさに吟遊詩人、といった感じのゆーきゃん。
歌い始めた瞬間にその場の空気がふわりと浮きあがったような感覚がありました。
本当に丁寧に奏でられるメロディにのるその声は、唯一無二の存在感。
小さな明かりとなって辺りを照らすような歌声。


チューニングしながらの途中のMCでは
「つなぎとして少しでも皆さんに楽しんでもらえる演奏を…と思っていたんですが、
 さっきのギターの歌を聴いて気が変わりまして…
 Qurageさんのギターのためだけに歌おうと思います。」
と、彼もまたQurageの歌に魅せられた様子。
この日はゆーきゃんさんだけでなく、皆MCで自分以外の出演者の演奏に触れていて、
そういうところもこういう小さなイベントの魅力だなーと感じました。


「明けない夜」「エンディングテーマ」と、
大好きな曲を2つやってくれてかなり嬉しかったです。聴けると思ってなかったので。
最後は前野健太さんの曲をカバー。
ほんと魔法のような声質に、思いっきり癒されました。


http://profile.myspace.com/akaruiheya


・circe


ギター、マリンバ、ドラム …&その他もろもろの3ピースインスト。
出演者出入り口の扉をなんとか通り抜けてステージに置かれたマリンバに目が釘付け。
「あーいう風に組み立てるのかー」「思ったより大きい」とか、
演奏始まる前からかなり楽しんでる自分がいました。


準備整って、静かに3人呼吸を合わせて演奏開始。
「4pictures」という4部構成からなる曲(合わせて20分弱)。
絶妙な緊張感と心地よさのバランスを保ちながら、
一つ一つの音が丁寧に丁寧に響き渡ります。
最初はマリンバの音やその奏者である寺内さんの動きに目と耳を奪われてばかりいましたが、
次第に他の2人もなかなかにクセのある音を鳴らしていることに気付き始め、
最終的にはステージ上を視線が忙しく動き回ることに。
(目閉じて聴くことも多い自分にしては珍しいこと)
バックには石田直輝さん演出の映像が映し出され、何とも不思議な空間が出来あがっていました。


そんな感じでいろんなところに注目ポイントがあって、休む間もない感じだったんですが、
中でも痺れたのが、マリンバ寺内さんが途中でマレット4本持って演奏し始めた場面。
目にもとまらぬ速さで奏でられるマリンバの響きに、
エレキギターという異質とも言える音が見事に調和するその様子…
今まで感じたことのないタイプの刺激をもらいました。心地よく、かっこ良かった。


車上荒らしの被害に遭った後、残った機材だけを使って作った、という曲「gone」では、
ベースにアコーディオンに鉄琴に、メンバーそれぞれが普段と違った楽器を演奏。
何だか改めて、楽器の魅力、音の鳴り方、
そしてそれを組み合わせて作られる「音楽」という存在の面白さを教えてもらったような気がします。


アンコール(と言っても狭くて退出するのも大変なため、拍手の間もステージで待機してましたが笑)
では、盗難前の機材で録音した最後の曲を別アレンジで。
言葉はありませんが、いろんな感情が伝わってくるライブだったと思います。


http://www.myspace.com/circe69




・その他


ライブの合間にキツネの嫁入りマドナシさんに声をかけてもらったり、
終演後にゆーきゃんさんに挨拶してそのキツネの嫁入りのLIVE音源を購入できたり、
dracaenaのメンバーさんと挨拶する機会があったり、
積極性ゼロの自分にしてはライブ外でもいろいろ新鮮な体験ができたイベントとなりました。
(名前は書かないですけど、御一緒できた方々に感謝)


「今となっては意味がある すべて僕等にも意味がある」
とは「ギター」/Qurageの歌詞の一部。
ここだけ切り取ると、ありふれていてあまり説得力もない台詞ですが、
この日のライブを思い出しながらこの歌詞に触れると、身に染みるものがあります。
悲しくて弱さを抱えているけれど、しっかりと前を向いた姿勢。


素晴らしい音と温かい雰囲気をくれて、
なおかついろいろ考えさせてくれるイベントだったと思います。
改めて、出演者の皆さん、企画者さん、シャングリラの皆さん、一緒にライブを観た皆さんに感謝。
ありがとうとございました。