太陽のなかで愛されたら 君はもう生きれないかもしれない


Ghost Apple

Ghost Apple


なんだろう、この中毒性は。
言葉と音が頭の中を飛び交って、乱反射して、、、
自分の居場所がどこかわからなくなるような感覚。


箱の中の一週間がどんどん膨らんでいって、
本当の一週間よりも大きくなってしまいそうだ。



月曜日/無菌室



初っ端から、優しくてどこか清々しささえ感じるような声で、
「君はもう生きれないかもしれない」なんて歌ってしまう波多野さんが憎らしい。
そして、一瞬の沈黙から、まるでナレーションのように歌われる一節。
「ようこそ ここは舞台で女優が消えた場面さ」
ここから一気に舞台の向こう側まで引っ張られて、
気がついたら観客ではなく物語の一部になってしまってる。
ずぶずぶずぶ 蝕まれていく。


指を重ねて 地図をなぞって
だけどそこには何もなくて
僕も行きたいよ 僕も行きたいよ
次の世界へ そこへ



火曜日/空室


なんだか学校のチャイムを思い出してしまうようなリフから、
断片的なイメージが無造作にばら撒かれていく。
121グラムっていったい…とか思ってるうちに
全部消えてしまっていて、途方に暮れてしまう。
そして何もなくなった後に何かを刻みこむようなラストのギター。
空室でこの音が響いている情景が頭に浮かんで、そしてまた消えて。



乾いて割れたプール ある朝消えた 彼女は消えた



水曜日/密室


形容しがたい圧倒的な違和感と高揚感を持った世界観。
まさしく、戻れなくなってしまいそうな中毒性。
聴いてる側をいったいどこへ連れて行く気なんだ、彼らは?
目まぐるしく動き回る場面の中にぽつりと立っている、
「青い空が先に目を逸らしたってさ」というフレーズが強烈。
ちょっと油断すると息が詰まってしまいそうになる。


指で、口で、満たしたいよ 呼吸を!



・木曜日/寝室


こんな寝室嫌だなー(笑)
波多野さんはこんな夢ばっかりみてるんだろうな…とか疑いたくもなる。
だいたいそんぐらいでなきゃ、このアルバムに出てくるような言葉、出てこないでしょう、普通…
眠れなくなりそうな木曜日。


これ誰かの夢だ!



・金曜日/集中治療室


「めちゃくちゃにして、やろうよ
 めちゃくちゃにして、あげるよ」
こんなフレーズをこんな透明感溢れる形で響かせるバンド、他には絶対いない。
出だしの轟音ギターにからかうようなリズム、謎かけのような言葉たち。
「少しだけ葬る」ってセリフ、こんな発想どっから出てくるんだろう…
ラストの盛り上がり、ライブで聴いたら失神してしまうんじゃなかろうか。ちょっと怖い(笑)


翌朝 報いの雨に濡れて
ダメになった絵の中の国で
僕らの困ったように笑う姿は
溶けていったよ
消えていくよ



・土曜日/集中治療室


静かに始まって、静かに終わる曲。
それなのに、初聴きのインパクトはこのアルバムの中でも最大級だった。
切り取られたいくつもの「1シーン」、それぞれに強烈なイメージを焼き付いていて。
「すべての窓が2人をのぞきこんで いっせーのーせっ で歌い始めた」
こうやって文字にしてしまうと雰囲気がまるで違ってみえるから不思議。
あと一錠だけ、あと一錠だけ。


世界中に電話 鳴る 僕は、君は、出ない



・日曜日/浴室


ライブで何度か聴いた曲。
これ聴いたらもうかくれんぼできなくなる、ほんと(笑)
イントロから既に別世界が生み出されていて、
それが、「もういいかい?」「まだだよ」の繰り返しで深まって行って。
「この狭いバスタブが世界を蹂躙する」ってなんだそれ!って感じだけれど、
なんだかわけのわからない説得力があって、
本当に全部が狭い浴室に閉じ込められてしまったように思える。
そんなふうに、聴いている側を置き去りにしておいて、
言葉と音は浴室を出ていってしまう。いやー本当に、なんか、ずるい(笑)
そして月曜日へ、無菌室へ、戻って行く。



「もういいかい?」
「まだだよ、まだだよ、」
「僕はずるをして、もう一回生きてしまって」
「許せないよ だから、


わたしのいのちを、君にあげる
パンケーキみたいに切り分けて、あげる」





君の好きな唄をうたう 唄をうたっている
ずぶずぶずぶ 蝕んで 蝕んでいく


「月曜日/無菌室」/People In The Box