それはハッピーエンドなんだ


聴いていると無性に悲しくなる。決してそれが本質だとは思わないけれど、自分にとってandymoriの音楽とはそういうものになっている。大部分の曲は聴いていて楽しいし、なかでもアップテンポの曲は元気を与えてくれる。にもかかわらず、どこかに寂しさや儚さ、もっと言うと虚しさが漂っている、そんな感覚が消えない。


彼らの音楽に出会ったのは、twitterのとあるフォロワーさんがさりげなく紹介していた「everything is my guitar」と「青い空」のPVを観た時だった。まず「青い空」の「吐き気のするあの顔を 大事な人の中に見て いろいろと嫌になって 飛び出してきたけれど」というフレーズが強烈に耳に残った。衝撃を受けた…というほどではなかったけれど、確かに引っ掛かるものがあって、CD(「andymori」)を買った。

まず最初に自分の中に飛び込んできたのは「everything is my guitar」「ベンガルトラとウィスキー」「すごい速さ」というスピード感あふれる3曲。他バンドの曲にありがちなメロディの繰り返しや引き伸ばしが一切なく、すっぱりと潔く終わる曲の作りが凄く新鮮だった。しばらくはこの3曲中心に聴いていたように思う。

一通り最初の波が過ぎ去った後、あれ、これって実は凄いんじゃ…とだんだん思うようになったのが「ハッピーエンド」だった。今度ははっきり衝撃を受けた感じだった。

雨が降れば鍵をかけていいよ
誰にも知られないまま終わりになっても

それでハッピーエンドなんだ
ハッピーエンドなのさ
ほんとうにうたいたいうた
君にはうたってほしい

諦めと希望と何やらわけのわからない感情を全部詰め込んだこのフレーズが、良くも悪くもその先andyを聴く時にずっと傍を離れない柱になったように思う。



そして、今度は期待して待つことになった2ndアルバム「ファンファーレと熱狂」。これが自分にとっては本当に素晴らしいアルバムで、同時に彼らの音楽に悲しさを感じる決定打となった。

力ずくで行こうとしたんだよ でも地図はいつでも嘘つきで大体」「いつも最低 いつも最低最高最低」「昔の誰かに電話して 貰った花をまた枯らしながら 今度呑もうねと嘘をつくのさ」「美しさってなんだろうね お前だよとまでは言えるわけないけれど ひまわりを見に行こう」「優しい時間に撫でられながら諦めながらみつめたオレンジトレイン

どこまでもポップで楽しいくせに、何て寂しくて空っぽな音楽なんだろうと思った。優しくて惨くて。
「切ないけれど最終的には元気になれる音楽」というような感想をよく目にしたけれど、それとは逆で、「元気になれるけれど、悲しさが抜けない音楽」という印象だった。


それから時が経つうちに、自分にもandymoriにもいろんなことがあった。メンバーが変わって、解散の話が出て、その前にも後にも小山田さんがあれやこれや騒ぎを起こしてしまったけれど、何だか「そうだよなぁ」と思っている自分がいたりもした。


ラストアルバムは、自分が絶不調な時期に出たこともあって、今年に入るまでろくに聴いていなかった。長い間ライブも観ていなかったし、なんだかandymoriに対して、すっぽりいろんなものが抜け落ちたような感覚があったように思う。
それでも、やっぱり彼らの音楽が好きで、ずっとずっと聴いていたいという気持ちは消えることがなかった。ラストアルバムの曲達も、改めてゆっくりと聴くうちに、徐々に徐々に自分の中に溶け込んでいった。


そんな中で迫ってきた解散の日。大阪野音のチケットは取れなかったけれど、最後に何としても観ておきたいと思ってTalking Rockフェスのチケットを買った。

そして迎えた自分にとってのラストライブ。
一気に駆け抜けた19曲。andymoriに対して、そしてその周りにあふれる嫌気がさすようなあれやこれやに対して、自分が抱いていた複雑な感情を、吹っ切ってくれるような演奏だった。ラストの「空は藍色」「Life Is Party」で見えた風景は、ずっと大事にし続けたいものになったと思う。


その後、最後ということになっていたSWEET LOVE SHOWERの出演後に、結局武道館ワンマンで最後を迎えることが決まった。これはある種予定調和かもしれない。けれど、彼らの音楽が最後に響く場所として、これ以上の舞台は無いと思う。
自分は行けないし、行かないけれど、そこに流れる音楽は、やっぱり悲しくて、そして素晴らしいものになると思う。

そこで彼らの音楽は一部分では終わってしまうけれど、まだまだ自分の中では終わることはない。それはいつまでも続いていく…なんていうのはきっと嘘で、いつかは消えてしまうものなんだろうと思う。けれど今は、消えないように聴いていたいと思う。
空っぽの中に溢れる音楽を。
この、愛してやまない音楽を。


あの日の空は言うさ あの日の空は言うさ
Life Is Party 明日もずっと 続くよって



おまけ


はしゃぎまわった友達が笑わなくなったのは
誰のせい?わからないが

それでハッピーエンドなんだ
ハッピーエンドなのさ
どうせどこにも行けないのなら
ずっとここにいてもいいんだよ

夕暮れの井ノ頭公園で
コーラの空き缶蹴飛ばして
もうだめかもしれないと
こぼした君の横顔すごくきれいで

それはハッピーエンドなんだ
ハッピーエンドなのさ
どうせどこにも行けないのなら
ずっとここにいてもいいんだよ