People In The Box 『Sky Mouth』Release one-man Tour @梅田akaso


People In The Box
彼らのワンマンに行くのは2回目で、
前回は自分にとってのピープル初ライブでもありました。
まだ彼らの音楽を好きになって日が浅く、
すべての曲名をしっかりと覚えていないぐらいの段階で体験したそのライブは、
今も鮮明に記憶に残っているぐらい素晴らしいものでした。
そこから彼らの音楽に触れる機会が一気に増えていくことになったわけなんですが、
そんな経緯もあって、「Ghost Apple」という傑作を携えての今回のワンマンは
かなり期待度が高く、一か月ほど前からずっと落ち着かない状態で待っていました(笑)


そしていよいよ当日。
胸騒ぎとともに待ちきれない思いを抱えながらAKASOへ。
元々バナナホールが場所に作られたというこのライブハウスに来るのは初めて。
その広さに若干驚きつつ、カシスソーダをちびちび飲みながら開演待ち。



以下セトリ等、注意。





照明が落ちて、SEが流れ、熱さと冷たさが入り混じったような静けさが漂う中、
焦らすようにゆっくりと時間をかけてメンバーが登場…
と、同時にドラム大吾さんの超ハイテンションな挨拶で一端打ち消される静寂と緊張感(笑)
大吾「やってまいりました大阪!ツアーセミセミファイナル、始まります!!」(爆)


ひりひりした空気から一瞬解き放たれた会場のざわつきがまだおさまらない中、
それを気にするそぶりも無く、波多野さん、前回のワンマン同様淡々と詩の朗読開始。


一つ一つの光景が目に浮かぶ、物語のような詩。
砂の海、ピアノ、輝く目、そして大口を開ける青空。
先日発売されたシングルのタイトル「sky moutu」を連想させる世界観で、
波多野さんが「ありがとう」と言う頃には、
既にライブハウスが彼らの「箱」の中に変わっていたような印象を受けました。
そしてそのまま流れるように同シングル1曲目である「生物学」へ。


大吾さんが打ち鳴らすドラムとシンバルの音が巨大な生き物の足音のように響き渡り、
それに覆いかぶさるように柔らかく響く波多野さんの歌声。
さらに続けて、1つの組曲のような一体感を保って鳴らされたのは
「天使の胃袋」のイントロ。

君は僕みたいだね
大丈夫 ってさ
傷をつけてあげるよ


印象的だったのが、
「息をするよ」のフレーズからの間奏で一端静けさが訪れた後の流れ。
血液の動きを感じさせるベース、
震えるようなシンバルの響き、
そして光差す歌声、と続いて、
最後に3人の音が一気に外へ開かれていく。
初っ端から軽く意識がとびそうなぐらいの素晴らしさでした。


脳内痺れっぱなしのまま「水曜日/密室」
これも中盤以降の研ぎ澄まされた音の波に心震えるばかり。
「密室の蝶みたいだよ 君の祈りは」のくだりでは、
思わず空を仰ぐように天井を見つめてしまいました。



ここで一端MCタイム。
3曲しかやってないのにもう「一息いれる」という言葉がしっくりくる感じでした。
しかしそこは自称ドS(笑)の波多野さん、簡単なあいさつと
胃もたれがするぐらいたくさん曲をやります」
という嬉しくもなんだか怖い一言のみで、また休む間もなくたて続けに3曲。


「見えない警察のための」では、とにかく福井さんのベースに目を奪われました。
この日は今までになくベースに注目する場面が多かった気がします。
そして圧巻の迫力だったのが「月曜日/無菌室」
「太陽がのしかかるやわらかに」の部分で、音がのしかかってくるような錯覚に陥り、
そこから先はずぶずぶずぶと蝕まれていくばかり。
連鎖反応のように「火曜日/空室」では、
だんだんとステージにも客席にも誰もいないんではないかという感覚に。
ピープル独特の、本当に綺麗な轟音、それだけが部屋の中に響き渡って。
気がつけば目を閉じて聴いていたんですが、最後の音がばしっと止まると共に、
すっとその目が開かれて、同時にメンバーとお客さんが戻ってきた、そんな不思議な気分でした。



ここでまた、チューニング等で少しだけ間が。
曲をやってる間は物凄い緊張感に包まれっぱなしなので、まるで息継ぎしてるような気分。
波多野さんが「よし。どんどんやります」と言って演奏再開。


「六月の空を照らす」「犬猫芝居」と、Frog Queenからの2曲。
犬猫〜はライブで割とよくやる曲ですが、
何度聴いても「ほんの数秒でみるみる弱って 虫の息になることもある けどそれも今夜までさ」
の部分が素晴らしい。彼らは本当に強弱の付け方がうまいなぁ、と再確認。


続く「木曜日/寝室」は、アルバム内では地味な印象の曲ですが、
生で聴くと、隠し味のスパイスのように他の曲とは一味違った良さがありました。
滑るベースの響きに支えられ、おもちゃのように鳴るサウンド
ラストの3人の息の合い方が抜群で、けっして綺麗な曲ではないのに何かの芸術品のようでした。

さらに、回る、回る、「She Hates December」



場内の空気が耐えきらないぐらいに張り詰めたところで、
大吾さんのすべてをぶち壊す大声(笑)(時雨のピの人と似た感覚が…笑)
のらりくらりと少し喋った後、「えー、それでは、ベース福井健太で、「MC」」 
なんすかラジオの曲紹介みたいな前置きは(笑)


福井
「皆さん来てくれてありがとうございます。
3回目のワンマンでこんなに来てくれて…とても嬉しいです。
大吾が言ってましたが、これがセミセミファイナルで。前の岡山がセミセミセミファイナルで…
明日の名古屋がセミファイナルになるんですけど、…
波多野「最初のは?」
福井「セミセミセミセミセミ…まぁスタートって言ったらいいんですけど」(笑)


福井「今回のツアーけっこうきつかったんですけど…
何がきついって、耳かきを忘れてきたんですね。」


「1日2回するんですけど」
「絶対わかるっていう人けっこういるはず。」(場内微妙な笑い声w)


「1番いい耳かきは99で売ってる、黒いやつで…取れた時にはっきり分かって。
達成感が違うんです。おすすめですよ、99の耳かき。」


「4本耳かきもってるんですけど。
そのうち一本は京都で買ったやつで。
竹でできてるんですけど。血が出るくらい痛いんですね。
…京都なら近いんで、ね。それももしよかったら…おすすめです(え)
…曲やります。」(爆)


場内笑い声に包まれっぱなしでした。
福井さんには計算された天然キャラを感じます(笑)



で、一気にゆるゆるした空気になったと思っていたら、
気持ちを切り替える暇も与えないままに「ブリキの夜明け」へ。
この曲がピープルの曲の中でも1,2を争うぐらいに好きな自分は、
直前まで笑ってたことも忘れて思わず息をのみました。

疲れたらいつも彼女は
眼を閉じる 遠くに雨を降らす

曲が進むに従って次々とギターの音が運んでくる絵が変わっていきます。
暗闇。点滅。雨音。海。 
そして最後には、静寂が鳴り響く、という何とも矛盾に満ちたイメージが
自分の中に湧きあがってきて、思わず呼吸するのも忘れそうになりました。


そしてその静けさを保って「土曜日/待合室」、「サイレン」
ひりひりした空気の中で響く3人の音の絡まり方が絶妙。
誰か1人の音に注目、ということがなくて、それぞれに見せ場があり…
彼らの作る三角形は、正三角形じゃなくて、
飛び出したりはみ出しながらバランスを保っているんだな、と、そんなことを感じました。



そして大吾さんのターンへ(笑)



大吾
「やっと俺の出番だ!!」


「えー、今日は大阪ということで、この先関西弁オンリーでしゃべろうかと…
…(長い沈黙)…あきまへんわ。」(笑)



「今回People In The Boxはシングルというものを出しまして、
タイトルが… 「スカイ→マウスゥーーー」(裏返った声 笑)
というんですが。持ってる人手あげてーー。けっこういますねー。
その前にはミニアルバム出してまして。
そちらのタイトルが「ゴーストー↑アップルー↓ヒーーーハーーー!!!」


もはや恒例のヒーハーに、何故か場内拍手(笑)


大吾
「じゃぁ皆さんご一緒にーーー。左手を上げてーーこう、ひー…はーー!とね。
みんなやんないとおれもやらないからね」(笑)

「じゃぁいきます。ゴーストーーーアップルーーー」
場内全員「ヒーハー!!!」

大吾さん
「最高っ!!…今回のツアーで毎回疑問に思ってるんだけど、なんで2人(波多野さんと福井さん)
だけやってないの?おまえらもやれよっ」
波多野「俺はこの2人がが普通だと思ってるから。やってる人たちがおかしい」
福井「こっちがスタンダードですよね」
大吾「みんなやつらのいうことは聞いたらだめだ!」


お二人と同感です(笑)




大吾
「物販では波多野デザインの胃袋Tシャツがおいてます!!
買った人ーーー …少ないなおい!!」
波多野(ぼそっと)「もっと買えよ」
波多野「お金あげるからもっと買えよ」


場内爆笑。



大吾「残りの曲少ないんですが…」
客「えーーーー」
「いややー」
大吾「俺やって嫌やわ!」


忘れたころに関西弁(笑)



「たこ焼き好き?俺も好き。」 
「たこ焼き好きな人に悪い人はいないって思ってるんですが… 全力でぶっ殺しに行くんで。よろしく」



そして「はじまりの国」へ。本当に心地良い、リズム。
さらに前回のスタクラ(対バンあり)でダブルアンコのラストでやってくれて鳥肌物だった
「金曜日/集中治療室」。これにはテンション上がります。
「少しだけなら葬ってあげる」のフレーズにふらふらしながら聴いていると、
間奏のところで突然大吾さんのドラムソロ。
これはいいアレンジだなーとか思っていると、
「なんてことしたんだ君は」のフレーズが…!
そう、「一度だけ」
バンドサウンドでこの曲が聴けるだけでも驚き&感動なのに、
まさかこんな繋ぎ方をしてくるとは…!


驚きで興奮しまくってる間に一度だけ、が終わり、
呆気にとられたような静けさが一瞬場内に。
そして何事も無かったかのように「金曜日/集中治療室」を途中から演奏しだすメンバー。
全部「めちゃくちゃに」するかのごとく思いっきり叩き、うねらせ、かき鳴らす。
ああああああもう(壊)凄すぎる。


さらにさらに間髪いれず「ペーパートリップ」 
体の中を音が駆け巡るのを実感。
そして本編ラスト「日曜日/浴室」へ  
…この流れ、思い出しても体が粟立ちます。本っ当に凄かった。
「もう一回触れたかった」の後の波多野さんの叫び、
こちらも一緒に声出して叫びたくなる、そんな衝動を抑えるのに必死でした。





そしてアンコール。


再び大吾さんのハイテンショントーク(笑)の後、
おずおずと福井さんが一言「耳かきの件なんですけど…」


この時点で場内爆笑。


福井
「東京戻ったら耳かきやると思うんですけど…どんなでかいのが出るか楽しみです。」
「報告するのでチェックしといてください。逐一。」
波多野「それで時々声掛けても無視するの?」
福井「ああ、そうそう。膜はってるからね(笑)


大吾さんの勢いに隠れてた印象ありましたけど、この人も面白すぎる(笑)



波多野
「今日はツアー始まってから一番みなさんの顔がよく見えるんですけど
思い思いの受け止め方をしてくれてありがとうございます(含み笑い)」
…また意味深な(笑)
波多野「あと2曲やって帰ります」



アンコール1曲目は「失業クイーン」  

僕等はできるだけ長く 息止めていたよ
どちらが先に気絶するだろうね
あんなに世界を呪っても 虚しいだけだった君は
どこへいったんだ?


前回のワンマンではやらなかった曲なので、これは嬉しかったです。
続いて福井さんの何かを押しつぶすようなベースから「冷血と作法」へ。 
なんとも気持ちの悪いサウンド(褒め言葉)。ライブ冒頭の詩が頭に浮かんだり。
ラストの「今の君はきれいだった」が何とも言えない余韻を残してくれました。



ダブルアンコール。



大吾「大阪またすぐきます!」
客「おーーー」
福井(後ろを向いて何やら大吾さんに一言)
大吾「お前が言えよ!笑」


そして小声でひそひそ話し合う2人(笑)


大吾「えー、注意されました!(苦笑)大阪にはきません。京都でした。 
  THE NOVEMBERSと…皆さん知ってますか?彼らと京都磔磔2マンやります」 


これには場内歓声。自分も行ってしまいそう…
ついに京都のライブに初参加の日が来るのか…?


大吾「後3曲!(!) やって帰ります!」 


という流れで始まったのは新曲。(ファン歴の長い方によると、
以前からやっていた曲で、マレットという借タイトルらしいです) 
アルペジオのギターが静かに鳴り響く、「土曜日/待合室」と同じタイプ
の透明な雰囲気を持った楽曲、という印象。リリースが楽しみ。
続いて「完璧な庭」
この曲はリリース当初はそんなに印象の強くない曲だったんですが、
ライブで聴くたびにどんどん好きになってきてます。
「毎日、たった少し、ふたりは死んでいく」
というフレーズがじわりじわりと頭の中を侵食して行く感覚。


そしていよいよラスト。
大吾さんのドラムが、ゆっくりと、時計の針のように音を刻み出した瞬間にもう鳥肌が。
「ヨーロッパ」
ドラムの音に寄り添うように3人が小さく輪になってお互いを見た後、広がって演奏開始。
だんだんと、しかし確実に高まっていく緊張感。
主張することはなく、しかし存在感たっぷりに鳴らされるリズム隊の音に包まれて、
少し走り気味の波多野さんの語りが、小さく大きく響き渡ります。さりげなく
「目には見えないものを今にも「この手で」掴もうとしている」
と、歌詞にアレンジが加わっていたのにも震えを感じつつ、その間にもさらに膨らみ続ける熱量。


そして「やぁ みんなどこからきたんだ?」
のフレーズが、舞台上の役者の台詞のように言い放たれてからは、もうひたすら震えっぱなし。
ラストの「君の胸騒ぎが本当になるといいな」の後、思わず、という感じで波多野さん叫んだ
「あぁ!」という声の響きは、しばらく忘れられそうにない気がします。
動物のように全身を揺らしながら演奏する3人。
体中から音出てるんじゃないか?という迫力。
これでもかと感情が詰まった、それでいてあまりにも綺麗な轟音。


すべてを出し尽くすようにして最後の1音を鳴らした後、
ライブ序盤と同じように柔らかい響きで波多野さんが「ありがとう」と言って終演。
放心状態のままの自分の頭の中に、
いろんな音がどんどん蘇って溢れだし、止まらなくなって行くのを感じました。




セットリスト


1 生物学
2 天使の胃袋
3 水曜日/密室
4 見えない警察のための
5 月曜日/無菌室
6 火曜日/空室
7 六月の空を照らす
8 犬猫芝居
9 木曜日/寝室
10 She Hates December 
11 ブリキの夜明け
12 土曜日/待合室
13 サイレン
14 始まりの国
15 金曜日/集中治療室〜一度だけ
16 ペーパートリップ
17 日曜日/浴室


en1.
18 失業クイーン
19 冷血と作法


en2.
20 新曲(マレット?)
21 完璧な庭
22 ヨーロッパ



終演後、出口付近では、冒頭の詩を印刷した
ポストカード的なものが配られていました。
これはかなり嬉しかったです。


ライブに携わったすべての人たちと、このレポを読んでくださった人たちに感謝を。
ありがとうございました。