‘‘パズルの遊び方’’ tacica/LOST IN TIME/GINBACK/LONELY↑D  神戸スタークラブ

じめじめした空気が漂う梅雨の午後。
久々のスタクラは、そんな空気に対抗するかのように、開演前から熱気がこもる満員状態でした。
tacicaのツアーということで、お客さんは比較的年齢層が低かった気がします。


いつもどおり、中ほど少し後ろに陣取って、
スタクラ独特の雰囲気を楽しみながら開演を待ちました。





・LONELY↑D


OAとして出演の地元兵庫の3ピースバンド。
正統派で落ち着いた邦ロック、という感じ。
ギターボーカルの弾き語りから始まる曲があったんですが、
それがとても良かったです。地面にどっかりと足がついてて、
そこからしっかりと振動が伝わってくる感じ。


MCでは常連さん及びスタッフから発せられる大声に、
けっこう戸惑ってた感じあり(笑)
この日のお客さんはノリがいいんだか悪いんだか…
まぁ後ろから観てる分には楽しい感じだったのでよしとしましょう(笑)


これはこの日出演したバンド全てに言えることですが、
ただがむしゃらに演奏するのではなくて、
歌声を聴かせたいところはしっかりと聴かせる、
強弱がしっかりついていたところが良かったです。


LONELY↑Dオフィシャル 
http://heatmusicid.hp.infoseek.co.jp/




・GINBACK


こちらは女性3人の3ピース。
2008年結成とのことですが、そうとは思えない、
息の合った演奏を魅せてくれました。


決して軽くなく、重厚ながらも疾走感のあるギターの響き。
飽きの来ないリズムと痛快なサウンド
そして何より、それに負けじと響くボーカルが、
少し儚げで透き通っていて、なおかつよく伸びていて、凄く良かったです。


MC、それにその後の物販などでも親しみやすそうな喋り方を
してくれる方たちでした。今回のtacicaツアーの大半に同行(LOSTも一緒です)してるようなので、
これを機に徐々に知名度上がって行くんじゃないでしょうか?
これからの活動に期待してます。


audioleafで3曲フル視聴できます。(ライブの方が歌声の響き方と音圧が抜群に良かったです)
http://www.audioleaf.com/ginback/





LOST IN TIME


LOSTのライブを観るのは約2年ぶり。
その時は、ギターの榎本さんが脱退して、ベース&ボーカルだった海北さんがギターを握り、
サポートを3人加えて5人体制でのライブでした。


そのライブそのものは素晴らしいものだったんですが、
その前に発売されたアルバムや、その後リリースされた曲たちが
どうにもあまり好きになることができず、
中途半端な気持ちでライブに行ってもなー、ということでぐずぐずしてる間に
こんなに間が空いてしまいました…。


しかしながら、今年3月に発売されたアルバムがだんだんと耳に馴染んできたところに、
スタクラでtacicaと対バン!という話を聞き、さらにはブログ仲間さんの熱いライブレポを
目にして、今回のライブに参戦する事を決めました。
何より、また3ピースになってベースを握った海北さんの声が早く聴きたかったので。


そんなわけで、少し緊張しながら出番を待ちました。


そして現れたメンバー。
海北さんを筆頭に、ドラムの源さん、サポートギターの三井さん、3人とも笑顔。
そして、ステージから皆を見回して、ゆっくりと、
LOST IN TIMEです。短い時間ですが、頑張って歌いますので、よろしくお願いします」
と挨拶する海北さん。頷くように目線を合わせる他の2人。


そんな彼らの姿を見ていたら、なんだか自分の中でひっかかっていた雑音が
すっと抜けて行ったような気がしました。



1曲目は、最新アルバムの1曲目でもある「合言葉」
淡々と、優しく、そして力強く響く海北さんの声。
「あー、やっぱりこの声はこの人じゃないと出せない」と改めてその良さに
しばらく放心してしまいました。掠れて消えそうで、でも太い太い芯に支えられた歌声。


スローテンポの心地よいリズムに酔っていたら、
2曲目は「証し」。2年前のライブでは1曲もやらなかったアルバム「時計」
からの、メッセージソングでした。
走り抜けていくメロディーに、「言葉」以上に響く何か。



 静かに願うよ
あぁ 言葉よりも もっと心の近くで 僕は歌いたい



源さんのドラムに、海北さんのベースの良さはもちろん、
三井さんのギターもLOSTの音に凄く馴染んでいて良かったです。
以前、ネット上にupされていた、三井さんがサポートに参加したばかりの時のライブの音は、
正直言って以前のLOSTの音と違いがありすぎて戸惑いが多かったのですが、
今回はむしろギターが全体のサウンドを引っ張っているように思えました。


続いて、
「「誰か」なんて存在は、ほんとはいらないと、思うんです」
と一言あって、「誰かはいらない」。
「失くした感情の一番奥に僕は恋い焦がれた」というフレーズで始まる
この曲にいろいろ個人的に「あーーー。うーーー」となりつつ(謎でごめんなさい)
さらには、「僕たちはこの曲から始まりました」という言葉と共に、
1stアルバムの1曲目、「花」


笑ってたのは もう昨日の事
今の僕に 明日は見えない

季節を変える風が 心を貫いても
もう2度とあの日と同じ 花は咲かない


2ndアルバムのタイトルは「きのうのこと」
そして最新アルバムのタイトルは「明日が聞こえる」。
そしてこの曲。いやはや、ずるい選曲です。そんなに泣かせたいんですか!(笑)


そのまま汗が蒸発するような勢いで、「希望」へ。
数10分前に、「あぁ 希望よりも もっと当たり前の何かを 僕は探したい」と歌った、
その同じステージで、今度は「希望」を歌う。
このあたりに、これまでの、そしてこれからでも続くであろう海北さんの姿、
すなわち、迷ったり悩んだりしながらも歌い続けて行く姿が、象徴されているような気がしました。



僕はまだ 答えはいらない
葛藤の中で 漂っていたい
揺れる心 消えない傷痕
声なき声叫び続けてる




ここで長いMC。


「息つく暇もなくや5曲やってきたので、ちょっと、苦しいです(笑)」
「次で最後になっちゃいました」


「今回ね、tacicaのツアーに参加させてもらって…大部分一緒に回らせてもらって…
 その。ね。 ほんと、嬉しいんです。  …いいタイミングで電車通るね(笑)」

(スタクラは高架下なのでしょっちゅう上を電車が通るのです)


「物販に、今日やった曲のCD全部持ってきてるんで。
 よろしくね。…よろしくね(笑)」
「ドラムの彼がブログをやってまして。物販にも、彼の作ったTシャツ…LOST IN TIMEってどこにも書いてない(笑)
 自分のブログのタイトルだけプリントしたTシャツとか売ってますんで、みてやってください。」


全体的にゆっくりと、少し照れたように喋る海北さんの様子が印象的でした。
そして最後にもう一言。


「スタークラブは、ずっと前からお世話になってて…2002年だったかな?初めて来たのは。
 大好きな場所です。みんなそれぞれ、大好きな場所ってあると思うんだけど…
 僕たちはこうやって、またこの好きな場所に戻ってくることができて…。
 また、来ます。また、会いましょう。」  
                    


もっといろんなことを言いたいけれど、言葉が足りない。
そんな気持ちが伝わってくるMCだったと自分は感じました。


ラストは、最新アルバムの最後の曲、「ハローイエロー」。
さようなら、の中に、また会おう、という気持ちが含まれているような、そんな演奏でした。



セットリスト


合い言葉
証し
誰かはいらない

希望
ハロー イエロー


http://www.ukproject.com/lostintime/top.shtml





tacica


LOSTのアンケートを書いて、余韻に浸っている間にあっという間にこの日の主役の出番。
さすがにtacicaのツアーだけあって、登場時の盛り上がりも一際大きかったです。


先にセトリ。



鼈甲の手
人鳥哀歌
アトリエ
ジャッカロープ
蜜蜂の毛布
メトロ
γ

en.
HERO



tacicaのライブを観るのは初めて。
全体を通して、冷静な演奏と歌いっぷりが印象的でした。
冷めた熱、ってああいう感じをいうのでしょうか。


何かの結晶を2つ打ち鳴らしたような、透き通る綺麗な音。
独特の言語感覚を持った猪狩さんの歌詞と歌声は、
まるで日常とは別の角度から世界を観ているよう。


ペンギンエレジー、アトリエ、と、勢いのある2曲の後に
演奏された「ジャッカロープ」が特に素晴らしかったです。
曲が始まると同時に、その場の空気が変わり、伝わってくる緊張感。



大人のように弓が刺さっても 
痛くない朝が来る
いくら器用に空を燃やしても
治らない 薬はない


彼らのように水を汚しても
気付けない夜が来る
誰も自由に濡れなくたって
降り止まない雨の音



ゆっくりと進む曲の進行、そのひとつひとつの流れに従って、
ライブハウス内の風景がだんだんと変わっていくように思えました。



MCまとめ。
全ては聞き取れないぐらい小さな声で、ぼそぼそとひとりごとのように喋る猪狩さん。
さっきまで力強く歌ってた人と本当に同一人物か?と思ってしまうような喋りでした(笑)



「暑いね…。梅雨って毎年来ると慣れるの?
 北海道には梅雨がないんで…」


「今回ツアーをずっと回ってて…たくさんお客さんが観てくれて…
 …どんどんMCが駄目になってきてます。困るね…
 …こんなこと言うつもりじゃなかったんだけどな。」
「そんなわけで…
 曲やってもいいですか?」

(場内笑)
「…いいですね。蜜蜂と毛布という曲を」


「蜜蜂と毛布」、そしてそのまま「メトロ」
MCとはうって変わって(笑)、静かな迫力に満ちたスケールの大きい演奏で、とても良かったです。



「今日で20か所目です。何で知ってるかというと、さっきたまたまスケジュール見たから」(笑)
 「前のライブで折り返しだったのに、何の感慨もなく通り過ぎてしまいました」


ドラムの坂井さんからは物販の紹介も。
こちらも対抗したかのようなぼそぼそしゃべり(笑)いや、和みました。



「また、春が過ぎて、夏が来て…それで秋がきて、冬がきて、そういうふうに、
 過ぎていくわけだけど…また、曲作って、CD出して、ツアーやるんで…また来てください。また会いましょう。」


「最後に、完全に自分のために作った曲を」


とのことで、本編ラスト、「γ」
本編全ての曲を「jacaranda」収録曲から選ぶという、レコ発にふさわしい
潔い内容のライブを締めくくるのは、やはりラストにふさわしいこの曲でした。


欠けた月に似てた自分から
捧ぐ鼓動の歌は響くか?
こんな夜は二度と来なくても


息は続く
それは恐いこと
だから自分が愛しくなった
そんな声を高らかに生きる



来た時と同じく、
静かに去っていくメンバー。
そして熱く響くアンコールの拍手。
この時、海北さんが物販のところまでやってきて、
一緒に拍手を送っていました。


そんな場内の様子に、勝手に少しこみ上げるものを感じている間に、
再びメンバー登場。


「ありがとう」と一言。
そして演奏されたのは「HERO」
自分にとってtacicaで初めて聴いた曲。


本編までは、どこか遠くの綺麗な音を聴くような楽しみ方をしていたんですが、
この時ばかりは、気が付けば場内の熱気と一体になってtacicaの音が作る世界に体を任せている自分がいました。



君は今日も明日も そのずっと前の昨日でも
「地球(ここ)は空一つない世界」と云うけど
せめて僕の奥では 縦横無尽にいつでも 空を飛んでくれよ



http://www.tacica.jp/index.html



ライブ終了後は、出演4バンドともメンバーが物販に出てきて、
しばらく挨拶したり握手したり、サインしてもらったりの行列ができていました。




当初は来るかどうか迷っていたライブでしたが、
来て本当に良かったと思います。
LOST、そしてtacica、今度はそれぞれワンマンで観たいと思います。