GRAPEVINE 15th ANNIVERSARY LIVE @渋谷NHKホール


1か月半以上経ってしまったけど書きました。
いつも以上に、個人的な要素が強いです。
一応順番に沿って書いてるけどもはやレポ成分がほとんど無いと思われ。




久々の遠征、当然初めてのNHKホール。
3階席は予想していた以上にステージからは遠かった。
でも、そのことを残念と思う気持ちよりも、この広い空間でバインがどんな音を届けてくれるのか、
それが楽しみだという気持ちを強く感じた。




1曲目は「MISOGI」。
事前に大阪のセットリストを軽く見て来ていたので、
驚きはしなかったけれど、それでも正直少し拍子抜けした。
最新アルバムの1曲目、ではあるけれど、
記念ライブの初っ端を飾る曲としては、少々インパクトにかける気がした。
普段通りやりますよ、とでも言いたげな、淡々とした演奏に、
こちらも「序盤は準備運動かな」というような思いを抱いたのを覚えている。


が、2曲目の「YOROI」で早くもそんな気持ちはどこへやら。
実際そこまで長くは無かったんだろうけれど、体感では10分超えの濃密なセッション。
ステージを楽しむ様子を見せつつ、時として鬼気迫る雰囲気での演奏を見せるメンバー。
さらに、それに続いてのスレドニが… 田中さん色気全開、オーラ出しまくり。
「それにしてもおまえ なぜはねるのだ」のフレーズに、広い広い会場全体がぞくぞくっと震えるのを感じた。


そうやって、わずか3曲でいろんな方向に心を動かされたところで、
「Glare」。


たかが満ち足りた世界で
胸がいっぱいになって
見たろ光を
走り出したくなって 正解だ


言葉一つ一つが体に響きすぎて、
キーボードの音色が優しすぎて、
早くも誇張なく泣きそうになる自分(…)
(今思い出してもこの日はかなり情緒不安定だった気がする。)
ここまでを通して、このライブはバインにとって、「普段通り、特別」なのだと。
当たり前かもしれないけれど、そんなことを思った。




一呼吸おいて、「This town」からの「真昼の子供たち」。
「大阪に捧げる」This townばかり聴いていたので、そこの部分が違うだけで
なんだか新鮮だった。曲自体ちょっと変わって聞こえたり。


さらにパーカッションとアコギ編成での「Darlin' from hell」から「Smalltown,Superhero」。
このあたりは曲が変わるたびに場の空気もがらりと変わった。
Small〜は個人的にかなり思い入れがある曲。


音は聴こえないんだ 色だけが焼き付いていたんだ


音が聴こえない景色が、音で存分に表現されている不思議。
情景が、色が、鮮やかに浮かんで、それがたまらなく儚げに見えた。



風景を見送るようにゆっくりと曲が終わって、
自分が感傷に浸っていたのもつかの間。
その余韻を消し去るように不穏な音が鳴り始め、そのまま「豚の皿」へ繋がる。


怖いほど綺麗な鍵盤の音色に、会場を包み込むひりひりとした空気。
その緊張感を保ちつつ、歌声が、オケが、強弱をつけながら広がって行く。
そして「疲れた独裁者は家に火をつける」からの圧倒的な熱量は、もう…
感情が自分でもよくわからない方向へ大きく揺り動かされて、なんだか困ってしまった。*1


そして、なんだかんだと揺さぶられた気持ちを落ち着かせようとしているところに、
とどめのように鳴り響いたのが「アナザーワールド」のイントロ。


完全にやられてしまった。
いろいろ溢れだして大変だった。
ひどく個人的なことばかりが思い出された。
空っぽの部分に手を差し出されたような気分だった。
(或いは土足で入りこまれたのかもしれない。不思議とその二つは似ている気がする。)


あの向こうへと
精一杯の声で 体で
明日もう一度 いつかはきっと
あの向こうへと
精一杯息をして
いつの間にか僕らには
もう僕らには
見えやしない




ここで(確か)軽く間が空いた。
新しい曲から古い曲へ遡っている、という話があったのもここだったか?
何にせよ、この辺りはそれまでよりも力が抜けた気分で聴いていたのを覚えている。
目を瞑ってメロディにただ身を委ねながら聴く「スロウ」が、少し寂しげで心地よかった。




「FRY」〜「BREAKTHROUGH」の流れには、
場所がホールであることを忘れさせられた。
疾走感と熱気に溢れた、たまらなく勢いのある演奏。
風が巻き上がるような、そしてそれが客席の隅々まで広がって行くような感覚があった。
その後の「マダカレークッテナイデショ−」も含め、この辺りはこの日一番客席が湧いていたように思う。
本当にほぼ全体を見渡せる場所に居たので、少し視線を変えればいろんな人たちのいろんな反応を見ることができて、
それがなんだかとても楽しかった。



場内が最高潮の盛り上がりを見せたところで、
「CORE」。
自分がバインのライブに行き始めたのはアルバム「Sing」のTOURの頃からで、
そのこともあってか多分この曲は一番生で聴いた回数が多いんじゃないかと思う。
長く、重たく、時に消化不良を起こしそうにさえなる、大きな大きな渦。
普段のライブでも相当だけれど、それをさらに圧縮したような濃厚な響き。
それを味わう中で、なんだか「この空間は永遠に続くんじゃないか」という気分になったりした。


でも、もちろんそんなことはなくて、割と突然に、あっさりとその音は途切れる。
途切れて、つかの間の静寂がくっきりと浮かび上がった後、また新しい音が鳴り始める。
何度も何度も耳にしたイントロ。
頭がそれが「here」のメロディだと理解する前に、感情の方が飛んで行ってしまいそうだった。



君や家族を 
傍にいる彼らを
あの夏を そういう街を
愛せることに今更気付いて



アナザーワールドの時もそうだったのだけれど、
ぼろぼろ涙が零れ落ちてしまって、ちょっとびっくりした。
こんな始終泣いてばかりのライブは初めてだったし、
今後あるともあまり思えない。いやはや。


そしてもはや涙も打ち止めかと思いきや、間髪入れず
「光について」。
…最大の見せ場が終わったと思ったらまた最大の見せ場、みたいな。
本当にこの日のセットリストは凄まじかった。


照明が極限まで絞られた状態で、
感情を極限まで締め付ける言葉が歌われ、メロディが鳴り響く。 
もはや立ち尽くしてただただその音を聴くだけの自分。
そして最後、「僕らはまだここにあるさ」でステージに光が満ちた、
その瞬間の光景が、本当に…何だろう。
美しいとか素晴らしいとか、そんな言葉では片づけられない、
この日浮かんだ感情のあれやこれやをすべて詰め込んだような、そんな光景で。


気が付いたらメンバーが退場していて、慌てて握手している自分が居た。


一枚の写真のように、ずっと残り続ける。
そんなふうに思える瞬間だった。
いつか忘れてしまう、なんて言われても、信じられないような。







怒涛の本編(特に終盤)が終わって、しばらく脱力。
アンコール待ちの拍手が、なんだかとても長く感じられたのを覚えている。


メンバーは予想通りというか何というか、お酒もってゆるゆると登場。
「鳩」で向かい合ってリズムを響かせる高野さんと西川さんは、
遠目にも、心底楽しんで演奏している様子が感じられた。
そこから「TIME IS ON YOUR BACK」「その未来」と、
ひとしきり場内を賑やかに盛り上げておいて、
「会いに行く」。
田中さんのボーカルがやたらと優しげで、
聴いているこちらもなんだか温かい気持ちになった。


そしてダブルアンコール。
田中さんが感無量といった感じで挨拶した後、
また緊張感のある雰囲気で演奏開始。
まずは「エレウテリア」。
数あるバインの曲の中でも、独特の立ち位置にいる曲だと思う。
名脇役でありつつ、ともすれば主演にもなりえるような存在感。
静けさの中にくっきりと浮かび上がる花の姿が見えるようだった。


そして、最後は
「Everyman,Everywhere」。
もうイントロから震えが止まらなかった。
ホール全体に一音一音が沁みこんでいくのが感じられた。
感情入りすぎて壊れそうなギターの音色に、
田中さんの、掠れかけなのに、どこまでも伸びていくようなボーカル。
これ以上なく最後にふさわしい演奏だったと思う。
最後のワンフレーズが、ずっとずっと頭の中で鳴り響いていた。



Everyman,everywhere
Everyone,anyone
Everyman,everywhere
Everyone,anyone
いつかこの想いを


セットリスト



1 .MISOGI
2 .YOROI
3 .スレドニ・ヴァシュター
4 .Glare


5 .This town
6 .真昼の子供たち


7 .Darlin' from hell
8 .Smalltown,superhero
9 .豚の皿
10.アナザーワールド


11.(All the young)Yellow
12.スロウ
13.涙と身体
14.覚醒


15.FLY
16.BREAKTHROUGH
17.マダカレークッテナイデショー
18.CORE
19.Here
20.光について


EN1.

21.鳩
22.TIME IS ON YOUR BACK
23.その未来
24.会いにいく


EN2.
25. エレウテリア
26.Everyman,Everywhere

*1:(一番困ったのは最後の「NHKが気になりだす」にどう反応したら良いか、という点だったりするのだけれど…笑)